春の憂鬱
デイサービス施設の中庭で、スミレが暖かな陽射しを浴びて咲いているのを見つけました。
桜が咲いて、やがて散るころになると、私は小学生の頃を思い出します。
60年も前のことです。クラスのみんなから『ちび・でぶ・のっぽ』と呼ばれていた仲良しトリオの女の子達がいました。
「のっぽ」は私。中学で止まってしまったけど、昔はクラスで一番背が高い女の子でした。
「でぶ」は今でも---。そして今は田園調布の素敵な家でケーキを食べてないときは 、タカラヅカに狂っています。
「ちび」はクラス一のおちびさん。それがつい四年前に全身の末期癌で入院していました。私が脳梗塞で入院した時で、互いにお見舞いには行けないけれど、みんなが寝静まった真夜中の別々の病院のベッドの中で、「痛くて眠れないの」という「ちび」に、「ちび」より背が低くなった「のっぽ」はメールを送り続けました。
お花が好きで、イギリスに留学してフラワーコーディネーターになっていた「ちび」が、抗がん剤の副作用でアレルギーが出て、もう花に触れなくなったと言っていたのが、
やがて桜が散るころに亡くなってしまって、
もうじき三年になります。
最近「のっぽ」は「でぶ」に、「ケーキは我慢して、長生きしてね」とメールを送ります。自分の方が後に残るのはいやだなと思うから。
こうして失うことが怖いから、いろんなことを我慢しているのかしら。
今日のリハビリの時に、隣にいた86歳のシスター(本物のクリスチャンの尼さん)が、「左の耳が聞こえなくなってきて」と、会話を聞き取れなかった左隣の人に謝っていました。
そして右隣の私に、「味覚もだんだんなくなって---」と、
「甘い、辛いは分かるんだけど、美味しいかどうかは---。もういろんなものを少しずつ、神様にお返ししているんです」
なんだ、そうか。借り物か。いつかみんな返すのか。
リハビリやデイケアに行くと、人生の先輩方がたくさんいます。
こちらは理学療法士や作業療法士の先生達とは違う、人生療法士。
時々わけもなく憂鬱な時に、施術してくださいます。