腰痛余話
私の腰痛は完全に治っていますが、そのスピンオフを。
先月のことになります。
まだ腰痛が治らず、痛み止めを飲みながら通所リハビリに通い、疑心暗鬼のままで鬼の施術を受けていた頃のことです。
新しいリハビリ患者が入ってきました。まだ40歳半ばの男性です。
最初にみんなの前に出る時は誰でも、ちょっと緊張した顔をしているものです。
ところが彼はニコニコ笑って、派手なビッコをひきながら杖を掲げて、「ちわーっス」って。髪はモヒカン刈り! 石の代わりに胡桃でもカチ割れるほど重そうな靴。
何でも面白そうに笑うのは、芸人に喜ばれそう。笑う合間に入る喋りは、不自由な足と一緒で少しつかえる。
でも、この声や笑い顔はどこかでー。
家へ帰ってからテレビを見ていて、ハタッと手を打ちました。
俳優で歌手の、「峯田和伸」に似ているんです。(知らなかったら、ネットで調べてみて) 天然というか、今時珍らしくピュアな感じが。
彼は、私が受けていた鬼の施術を見て、「痛いンっスか、くっくっくっ」と、、、笑ってました。他の人たちが自分へのとばっちりを避けて、目をそらせていたのに。
そして一ヶ月経って4月。
峯田和伸もどき君が兄に付き添われ、苦悶の顔でやってきました。
「野球でバッティングやってて、ぎっくり腰みたいになったンスよ」
「あっ、いや、甥と遊んでたから、プラスチックのバットとボールですが」(と、兄)
なーんだ、オモチャでかい。
ともあれ、兄の付き添いがあったにせよ 、痛み止めなしでリハビリに来たのはさすがです。
あとは私の時と同じ、マットに寝かされたまな板の鯉に、H先生の鬼の施術。その後「起きて運動しなさい」ただそれだけです。
「起きるのも痛いっす。動けるかなあ」
私は優しき先輩として忠告してあげました。
「ちゃんと治るから。H先生を『ゆめゆめ疑うことなかれ』よ」
峯田和伸もどき君は半信半疑の顔で、それでも素直に、
「ウィッす」と答えました。
後でH先生が、
「『ゆめゆめ疑うことなかれ』って、インチキ占い師なんかが言うんじゃないのぉー」
と、文句を言ってました。
腰痛がどうなったか、今度峯田和伸もどき君に会うのが楽しみです。